ユーザーオリエンテッドとは?意味と事例から見る本当の顧客第一主義

ユーザーオリエンテッドとは、直訳すると「ユーザー=顧客」「オリエンテッド=指向」となり、お客様を第一に考えるという指向、つまり顧客第一主義のことを表します。比較的新しい言葉のため、従来の「何でもお客様の仰せのままに」という顧客至上主義と混同してしまいがちですが、両者はまったく別のものです。こちらでは。ユーザーオリエンテッドの本来の意味や、企業の導入事例を紹介していきます。

 

目次

ユーザーオリエンテッド(顧客第一主義)とは

ユーザーオリエンテッドとは、日本語に直すと「顧客第一主義」という意味になります。企業の経営理念において、「お客様ファースト」「お客様目線で考える」など、顧客第一主義が声高に掲げられていることは多いですが、徹底できている企業はそう多くないのが実情ではないでしょうか。

そもそも、顧客だけを大切にすることは、本来の顧客第一主義ではありません。ともすれば社内のコミュニケーション悪化や協力会社の不満などから、良い仕事を納めることができなくなり、結果として顧客満足度が下がってしまう危険もはらみます。

ユーザーオリエンテッドとは、従来の顧客第一主義とはどういった点が異なるのか? 詳しく解説していきます。

ユーザーオリエンテッドは顧客優位ではない

顧客のニーズに応え、喜んでいただけることはビジネスの基本ですが、度を越した要望をすべて聞いたり、過度な期待に無理に応じたりすることは、正しい意味で顧客を大切にしているとはいえません。顧客ばかりを優先させれば、必ず社内にしわ寄せがきてパフォーマンスの精度が落ち、Win-Winの関係とは程遠くなってしまいます。

ユーザーオリエンテッドとは、「顧客の言うことは何においても最優先」といった発想から脱却し、顧客の要望や条件等を丁寧にヒアリングしたうえで、都度最適なソリューションを提案していくことこそが真の顧客第一主義である、という考え方です。顧客だけでなく、社内のリソースも含めた全体最適化を図ることこそが、ユーザーオリエンテッドの真の目的なのです。

ユーザーオリエンテッドと顧客満足度の関係

ユーザーオリエンテッドと顧客満足度の関係

営業マンが顧客だけにいい顔をし、無理難題を会社に持ち帰って「あとは頼んだ」では、社内の人的リソースは疲弊する一方です。「予算はないけどここまでは絶対作る」「お客様の都合に合わせて、業務時間外でも電話に応対する」「短納期だけど残業すれば何とか間に合う」と、社内に無理を強いていては不満ばかりがたまってしまい、作業クオリティが低下。満足する仕事が納められなくなります。低品質な成果物によって顧客に迷惑をかけることとなってしまい、結果として顧客満足度は下がってしまうでしょう。

ユーザーオリエンテッドとは、顧客の顔色を過度にうかがうのではなく、社内システムをきちんと整えることで仕事のパフォーマンスを最大に引き上げ、顧客満足度をアップさせる手法を指しています。

ユーザーオリエンテッドと従業員第一主義

「顧客第一主義」に相対した「従業員第一主義」という考え方も、ユーザーオリエンテッドの重要な定義の一つです。

これらはどちらが優れているというものではなく、「従業員第一主義」がゆくゆくは「顧客第一主義」につながることを示しています。従業員第一主義とは、決して顧客をないがしろにして社員を甘やかすことではなく、顧客満足度を上げるために社内で何が足りないのか?ある施策を実現するために、どんな課題をクリアしなくてはならないのか?を追求することです。

施策ありきで「ヒトも金も増やさない」のでは、すべての負担が社員にのしかかります。顧客のために新しい施策を打つのであれば、会社も相応の投資をしなければなりません。社内体制を万全にしたうえで施策に取り組めば、これまでにない結果が得られるはずです。

さらに、社員の負担感も少なく、むしろいい仕事ができたという手ごたえは、新たな価値を生んでいくでしょう。

【関連記事】目標管理手法「OKR」~KPI・MBOとの違いと運用方法

ユーザーオリエンテッドを実現するために必要なこと

ユーザーオリエンテッドを実現するために必要なこと

「従業員第一主義」から「顧客第一主義」へとつながっていくユーザーオリエンテッドを実現するためには、具体的にどのような手法があるのでしょうか。

まず、真っ先に取り組むべきは、社内の労働環境を整えて社員の「仕事の質」を上げることです。ワークライフバランスや働き方改革が叫ばれて久しい昨今、どんな過酷な環境でもモチベーション高く働ける!という社員像は望まれません。

また、社内環境が整い、成果物のクオリティが徐々に上がってきたなら、顧客アンケートなどで良い評価が得られた際に社内で共有するのも効果的です。自分の仕事が認められ、顧客に喜んでもらえたことで、ますます社内の士気が高まります。

さらに、顧客満足の結果を特別ボーナス支給といった具体的な待遇に反映させられれば、「お客様のためにもっと何かしたい」という気持ちにつながり、Win-Winの関係が長く続いていくでしょう。

ユーザーオリエンテッドの事例

ユーザーオリエンテッドを実践している企業として、代表的な4社の事例をご紹介します。

  •  アマゾン
  •  住友不動産
  •  日本ユニシス
  •  京セラ

アマゾン

アマゾン社内でのすべてのルールは、「Customers Rule!」という大原則に則って決められています。新しいビジネスの着手やシステムの導入に迷ったら、必ず「それはお客様のためになるのか?」と問いかけることからはじまるのです。常に「お客様のためになるorならない」の二択によって全員が動いており、ぶれることはありません。

日本ではお客様のため、というと「おもてなし」に代表されるような過度な顧客至上主義と捉えられてしまい、かえって生産性が悪くなるといった懸念もあります。創設者のジェフ・べゾスは、「Good intention doesn’t work , only mechanism works.(『善意』は働かない。働くのは『仕組み』だ)」というフレーズを好んで使います。お客様のことを考えるという点では同じでも、「おもてなし」は「善意」で、「顧客至上主義」は「仕組み」であるという意味です。これがアマゾン流のユーザーオリエンテッドであるといえるでしょう。

住友不動産

住友不動産販売は「人」が資本の会社であり、社員一人ひとりがお客様に喜んでいただく仕事をすることで、事業が成り立っています。創業時から変わることのない「顧客第一主義」を経営理念に掲げ、お客様が不動産でお困りの際は、真っ先にお声がけいただける存在であることを目標としているのです。

資源・環境問題が叫ばれる中、スクラップ&ビルドの発想を脱却し、価値ある既存住宅は大切にしなければなりません。既存住宅を取り扱うことで発生する住友不動産販売の「営業利益」とは、そのまま「社会貢献を表すものさし」であるといえます。そして、日々社会貢献に邁進している社員全員に、健康に楽しく働いてもらうため、さまざまな福利厚生を用意。「社員が健康で幸せだからこそ、お客様へ本当に価値あるサービスが提供できる」、これが住友不動産販売のユーザーオリエンテッドの形です。

日本ユニシス

日本ユニシスはシステムインテグレーターとして、サービスプロバイダーとして、各時代のニーズに応え、いち早くICTサービスを形にしてきた実績を有し、「顧客第一主義」のもとでお客様と長年にわたって信頼関係を築いてきました。

この関係性に甘んじず、ICTの利用から得られる付加価値を高め、お客様から選ばれ続けていく企業であるために、常に変革を繰り返していく。日本ユニシスのユーザーオリエンテッドのキーワードは「自身が成長し続けること」です。

企業が進化・成長していくには、未来へのイメージが欠かせません。会社の未来を担う社員のため、在宅勤務制度「Smart-Work」や育児・介護制度などを整え、少しでも働きやすい環境を提供しています。

京セラ

京セラは「お客様第一主義」を最も大切なテーマととらえ、お客様に喜んでいただくサービスや製品を提供することを命題としています。真の顧客満足を叶えるためには、時代の変化に即応するスピード感を持ち、京セラグループの技術力と経営資源を活かして、新たな価値を創造し続けなければなりません。

こうしたユーザーオリエンテッドを実現させるために、「人間として何が正しいか」をすべての判断基準とする「京セラフィロソフィ」と、組織を小集団に分け、全従業員に「経営者である」という意識を持たせる「アメーバ経営」の実践が必要と考えました。全従業員が経営に参画し、それぞれが仕事にやりがいを見出して、個人の能力を最大限に発揮することで、自らを高めて人間として成長できる。これが京セラの矜持となっています。

まとめ

従来の顧客第一主義とは一線を画す「ユーザーオリエンテッド」という考え方。お客様のためだけでなく、また同時に従業員のためだけでもない、全方位的な視点が大切です。顧客満足度を上げ、従業員の仕事の質も向上させられるユーザーオリエンテッドは、ビジネスにおけるWin-Winの最も新しい形なのかもしれません。