デジマ基礎知識
デジマ基礎知識
チャットボット導入時の課題とメリット、失敗しないコツは?
目次
自動会話プログラム「チャットボット」は、多くの企業のWebサイトで導入が進んでいます。オペレーターの代わりに顧客対応業務を担ったり、ユーザーが探している情報や商品を提示したりと、人間のようなきめ細やかな応対ができるチャットボットは、今や欠かせないビジネスツールとなっているのです。
チャットボットを導入するにあたり、気をつけるべき点や課題、導入に失敗しないコツなどを把握しておきましょう。
チャットボットを導入することによって得られるメリット
チャットボットの導入にあたっての課題の前に、まずは導入によって期待されるメリットを見ていきましょう。
- 業務の効率化
- 顧客対応の改善
- 顧客接点を増やす
- WebサイトのCV率向上
チャットボットの使い方と導入メリットの詳細については、下記ページも合わせてご確認ください。
業務の効率化
チャットボットにユーザーからの問い合わせや商品検索のお手伝いを任せることができれば、その分の人的リソースを他の業務に割り当てることができ、業務効率化が図れます。有人オペレーターの人数も大幅に削減できるため、そのコストを設備投資や人材補強に充てられ全体最適化につながるでしょう。
顧客対応の改善
ロボットであるチャットボットは、24時間365日、休みなく働き続けることができます。早朝や深夜など時間帯を問わずユーザーからのコンタクトに応えることができ、お待たせすることもありません。
特にECサイトではこの効果が顕著で、いつでもどこでも自分の欲しい商品が手に入るという利便性は、ユーザーにとって大きなメリットを生み出します。
顧客接点を増やす
Webサイトを訪れた際に何か困ったことがあっても、わざわざ電話やメールで問い合わせるまでもない、というケースは多く見られます。問い合わせするくらいなら他のサイトを閲覧した方が早い、そんなユーザー行動はごく自然なこと。生身の人間相手に聞くのは恥ずかしい、という心理も働くかもしれません。
しかしロボットであるチャットボットであれば、そうした心理的なハードルは下がります。リアルタイムで応答が返ってくるので待たされるストレスからも解放され、電話やメールでの問い合わせを避けていたユーザーにも使ってもらえことで、顧客接点の増加につながります。
WebサイトのCV率向上
Webサイトを訪れたユーザーが、「商品購入」や「資料請求」などの、企業が求める最終的な“ゴール”である行為にまでたどり着くことをCV(コンバージョン)と呼びます。内容が分かりづらい、導線が悪い等、サイト設計の不備によってユーザーがCVに至る前に離脱してしまうことも少なくなく、Webサイトを運営する多くの企業にとってはCV率の向上は最も優先すべき課題となっています。
チャットボットは、サイト内で迷ったり何かを知りたがっているユーザーの悩みを解決したりと、ゴールまでスムーズに誘導してくれます。人間のような丁寧なアテンドでサイトからの離脱を阻止し、CV率の向上に貢献してくれるのです。
チャットボットを導入する時の企業の課題
多くのメリットが期待されるチャットボットですが、導入にあたっては注意すべき事項も存在します。
- 費用対効果が検証しにくい
- 人的コストがみえにくい
- チャットボットと人的オペレーターの連携
- PDCAを回せる体制づくり
- 事前準備に不備が無いかの確認
費用対効果が検証しにくい
最初の課題は、チャットボットの費用対効果の算出スキームが確立されていないことです。
普及してからまだ日が浅い技術のため、ITツールになじみのない経営陣の理解を得るだけの材料がそろいにくく、チャットボット導入のための予算がつけられないという声がよく聞かれます。
人的コストがみえにくい
チャットボットは導入までに相応の準備期間を要するため、すぐに導入できるわけではありません。まずはチャットボットが正しく作動するためのFAQの設問集を作成したり、回答パターンをログにまとめたりする工数が生じます。
導入までにかかる人的コストを具体的に算出し、そのコストに見合うだけのリターンが得られるかを見極めることが大切です。
チャットボットと人的オペレーターの連携
チャットボットは決まったパターンの質問に対しては問題なく応答することができますが、クレームや少し複雑な問い合わせになると受け答えができなくなってしまうケースも見られます。
チャットボットですべての問題が解決されるわけでなく、対応しきれなくなったら人間のオペレーターに引き継ぐことを前提とし、引き継ぎ体制を事前に構築しておく必要があると考えておきましょう。この構築が不十分だと、かえって重大なクレームを引き起こす危険があるため要注意です。
PDCAを回せる体制づくり
チャットボットが能力を最大限に発揮するには、誤った回答をした場合や回答ができなくなってしまった際の状況を把握し、都度シナリオ等の見直しをする必要があります。
このメンテナンス・チューニング作業は、チャットボットの回答精度を高めるには絶対に欠かせない工程です。これを怠るといつまでも使い勝手が悪いままで、「電話・メールの方が早い」となって、チャットボットは次第に使われなくなってしまうでしょう。
担当者間でPDCAを回し、いつも適切なメンテナンスを行えるような体制を構築することが大切です。
事前準備に不備が無いかの確認
前述したとおり、精度の高いチャットボットを作成するためには、事前にシナリオや予想される質問集を作成するなどの下準備が欠かせません。また、準備だけでなく運用開始後のメンテンナンス人材も、あらかじめ見積もっておく必要があるでしょう。
準備から運用までどのくらいの人的リソースが求められるのか、抜け漏れがないように慎重に算出してください。
チャットボット導入の失敗事例
導入および運用にあたっての課題も見られるチャットボット。すべての企業がチャットボット導入に成功しているとは限らず、失敗例も多くあります。
こちらでは2社の具体的な失敗事例を取り上げ、失敗から学べることをご紹介。貴社の導入時に、同じようなことを繰り返さないことが大切です。
株式会社ソフトバンク 「教師データ」に現場の声が反映されず“使えない”チャットボットに
抱えていた課題
営業担当者が商談に使う資料を検索する負担が大きく、AI型チャットボットによって自動化できないかという目的からプロジェクトがスタート。スマホに話しかけるだけで営業提案に対するアドバイスをもらえる等、副次的な効果も期待されていました。
チャットボット導入に失敗した原因
AIの会話の基となる「教師データ」を作成する際、実際にチャットボットを使用する営業部門へのヒアリングが足りておらず、完成したデータがほとんど使えないものになってしまいました。導入までの検討期間が長かった割に、できあがったもののクオリティが不十分だったため、3カ月もしないうちに誰にも使われなくなってしまったのです。
InSync株式会社 LINE上の検索結果が別アプリで起動…使い勝手が悪くサービス終了
抱えていた課題
「友人とLINE上で旅行の計画を立てている時に、ホテルや旅館の情報をもっと簡単に検索したい」というユーザーニーズが頻発。LINEのチャット機能を使って、最安値のホテルや旅館をより簡単に検索・予約できるチャットボット「ロボチャくん」を開発しました。
チャットボット導入に失敗した原因
LINEアプリ上で、リアルタイムに宿泊施設の検索・予約ができるという機能自体は便利でしたが、検索結果を別アプリに表示させる仕様にしてしまったのが敗因です。結局LINEと別アプリ2つを併用するなら、最初から宿泊施設検索サイトで探したほうが早いとなり、早々にサービス停止に追い込まれてしまったのです。
チャットボット導入時に失敗しないコツ
では、チャットボットを企業のWebサイトに導入するにあたって、確実に成果を上げるにはどのようなことに気を付ければよいのでしょうか。チャットボット導入時に失敗しないためのコツを見ていきましょう。
- 目的の策定
- チャットボットの形式決定
- インターフェースの選定
- 管理体制の整備
目的の策定
まずは、何のためにチャットボットを導入するのか、どんなことに困っていてチャットボットに何をさせたいのか、その目的をきちんと見定めることが重要です。
オペレーター等の人的リソースを削減したいのか、ユーザー満足度を向上させたいのか、実現したいソリューションによって最適なチャットボットのタイプは異なります。誤ったチャットボットを開発してしまわないために、事前に導入目的をはっきりさせておきましょう。
チャットボットの形式決定
導入目的が定まったら、次はチャットボットの応答形式を決めます。チャットボットは大きく分けると二種類のタイプがあり、会話ロジックの仕組みから「シナリオ型」か「AI型」に分類されます。
「シナリオ型」とはAIを搭載していないタイプのチャットボットで、あらかじめ用意したシナリオ通りに受け答えをすることで会話を進めていきます。状況に合わせて臨機応変に対応することができないため、一問一答形式など単純な受け答えで済む課題に適しています。
シナリオ型 | ai型 | |
メリット | ・導入コストが低い
・シンプルな設定なのですぐにスタートできる ・同じ質問に対する回答を自動化できる |
・複雑な会話にも対応でき、人的リソースを削減できる
・運用開始後は自ら学習し、会話の精度を高めてくれる ・CVR向上に貢献できる |
デメリット | ・シナリオの設計が悪いとうまく稼働しない
・作成したシナリオ通りにしか回答できない ・人的リソースのサポートが必要で、完全な自動化は難しい |
・会話の質を上げるために、定期的なメンテナンスが欠かせない
・運用開始前に「教師データ」と呼ばれるデータベースを作成する必要がある ・「教師データ」の質が悪いと回答精度が下がる |
チャットボットの種類と特徴についての詳細は、下記ページも合わせてご確認ください。
インターフェースの選定
チャットボットはWebサイトのみならず、SNSやアプリに組み込むことも可能です。チャットボットを設置するインターフェースによってメリットや解決できる課題は多少異なります。
Webサイト
チャットボットの導入先として一般によく知られているのは、Webサイトです。画面の隅に現れるチャットボットを、誰でも一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
チャットボットをWebサイトに組み込むメリットは、ECサイトなどで商品をおすすめできたり、商品に対するユーザーの質問に独自に応えられたりと、ユーザーの気持ちに寄り添った対応ができることです。サイト離脱を防ぎ、CVR向上を実現させます。
SNS
FacebookやLINEなどのSNSにチャットボットを組み込むことで、ユーザーにとって使い慣れたインターフェースを通じて密なコミュニケーションを取ることができます。
SNSのプッシュ型通知は特に有効で、チャットボットを通じて押しつけがましくない程度に情報を提供することが可能に。SNSからの通知を受け取ることに慣れている若い世代にとって最適なアプローチ方法で、積極的に情報発信したい企業におすすめです。
アプリ
専用アプリにチャットボットを組み込むことで、ユーザーがアプリにアクセスするたびに「元気?」「こんにちは」などとチャットボットが話しかけ、ゆるいコミュニケーションを継続的に行うことができます。
アプリをインストールする=その企業への関心がある程度高いということでもあるため、チャットボットとの会話を楽しんでもらうことで、さらにその関心を高め“ファン化”できる可能性もあります。ユーザーとの接点を広げたい場合に有効です。
管理体制の整備
「シナリオ型」にせよ「AI型」にせよ、チャットボットの回答精度を高めスムーズな運用を続けるためには、定期的なメンテナンスが欠かせません。導入後にほったらかしにしてしまうと、いつまでたってもチャットボットの会話が上達せず、そのうちユーザーから使ってもらえなくなってしまいます。
あらかじめチャットボット専任の担当者を決めておくなど、管理体制を整えておくことが肝心です。
まとめ
企業のWebサイトにチャットボットを導入する際には、さまざまな課題が待ち受けていますが、まずは社内の意識統一を図ることが肝心です。
また、ユーザー行動に合わせた最適なシナリオを設定することで、チャットボットの効果を最大化しCVR向上へとつなげることができます。
貴社がチャットボットによって解決したい事項に優先順位をつけ、それにふさわしい機能をもったチャットボットを選んでください。